人間を人間的に扱った方がトク

ニューオーリンズのハリケーン被害に関するテレビのニュースを見ていて感じたこと。被害者として映し出されるのがアフリカ系ばかりだなあ・・・と思っていたら「市内の人口の3分の2が黒人」とのこと。なるほど。

いくつかの報道で、クルマを持たず、逃げるあてもお金もない貧困層が犠牲になったと知った。テレビでも「夫婦と子ども2人の家族で、世帯収入が年間210万円以下の貧困層が全米平均より多い地域」と言っていた。なんとも気の毒だ。

グラミー賞を取ったこともある人気歌手(アフリカ系)が「政府は黒人のことなんか考えていない」と発言して騒ぎになっていたそうだ。生放送でこの発言を流しちゃったNBC(だったと思う)は、再放送でこの部分をカットしたとか。何だよ、全然表現の自由、ないじゃん。アメリカ。

トヨタの5億5000万円を筆頭に、企業の寄付も相次いでいる・・・と聞いて、堤防直すとか、もっと早くに対応していたら被害額も少なかったろうにと思った。

それで思い出したのが、7月25日付のニューヨーク・タイムズで、経済学者のポール・クルグマンが書いていたコラムだ。トヨタが新工場をカナダのオンタリオ州に作ると決めたことに伴って、アメリカ政府を批判している。トヨタはすでにアメリカ南部に工場を持っているけれど、労働者の質が低いこと、公的健康保険が充分でないことを嫌って、新工場はカナダに決めた。

「treating people decently is sometimes a competitive advantage(人間を人間らしく扱うことは、時には競争上優位にもつながるのだ、とでも訳せばいいのかな)」という結びが印象に残っていた。

テロとの戦い、とか言って国内の貧富の格差を放置してたツケが回ってきているアメリカ政府は、やっとこれに気づいたのではないか。

ちなみにクルグマンのこのコラムは『嘘つき大統領のアブない最終目標』、『嘘つき大統領のデタラメ経済』として邦訳が出ている。アメリカ人じゃなくても、読んでいると暗くなるくらいブッシュ政権の汚さや悪い部分ばかり書いてあるけれど、イラク戦争に正当性なんかなかったことが明らかになった今では「全部その通り」と思うことばかりだ。