「女ひとり世界に翔ぶ」を3分の1まで読んだ感想

世界銀行の元シニアエコノミストの著者(小野節子さん)が、内部から見た世銀の姿を描く自伝。まだ3分の1しか読んでいないけれど、私から見て本の面白い部分とダメな部分がはっきり見えてきたので感想を書いてみる。

□■面白かった部分■□

①世銀の問題点が具体的に描かれている
総裁が変わり、融資の基準も変わってしまった例など、人名入りで描いている。


アメリカ批判しっかり
本は9.11のシーンから始まる。貧富の格差、富める者への恨みがたまってこういうことが起きるのも当然、と言わんばかりの書きっぷりは、すがすがしい感じがした。


③アフリカのダメさ大変さが描かれている
著者が世銀で担当したのは、モーリタニア。広大な砂漠、ガタガタの統治機構・・・。一般論で聞いたことがある、アフリカがなかなか発展できない理由が具体例を示しつつ描かれる。


④国際結婚の困難を率直に描いている
結婚1年もたたないうちに離婚を決意したイタリア人の夫とのやり取り。面白い。結局どうなったかは読んでのお楽しみ。


■□ダメだと思った部分□■

肩書きの見せびらかしが多すぎ。それがこの本の面白さを台無しにしている。

まず、本の表紙見返しの部分にある著者プロフィールにのけぞる。自身の話より先に、親や祖父、曾祖父の肩書きが長々と続く。父は銀行家、祖父は貴族院議員だったそうだ。何より重要なのはお姉さんがあの「オノ・ヨーコ」であること。

正直、普通の読者にはお父さんやおじいさんの話はどうでもいい。プロフィールは素直に「●●年、どこそこ生まれ」から始めて、最後に「姉は芸術家でビートルズ ジョン・レノン妻のオノ・ヨーコ」と付け加える方が嫌みがない。


本文中でもイタリア人の夫が貴族の出身だとか、ジュネーブで下宿した先の家が名門だとかいう話が随所に出てくる。自分の結婚式の出席者の1人を「東大卒の○○さん」と紹介してあるのを見て、萎えた。


超競争社会の世銀では、自分がいかに「影響力のある人と知り合いか」を示す必要があったのかもしれない。けれど日本の読者向けに自慢めいたことを書いても逆効果だと思う。まずは、世銀での仕事の話だけにしておいて、インタビューなんかで、ちらちらと「良家の出身」であることを見せていった方がよかったのにと残念に思う。日本における好かれるPRはあんまり知らなかったのかなあ。